Japanische Klassiker mit Furigana
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キチガイじごく
キチガイ地獄
夢野 久作
Lesen Sie キチガイ地獄 (キチガイじごく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.486 Zeichen · 46 Bildschirme
もっともその時に万一、私が過去の経歴を思い出していたら、話はソレッ切りで、目出度し目出度しになっていたかも知れません。アンナ空恐ろしい思いをさせられないまま、音も香もなく土になってしまったかも知れないのですがね……。
それから約二週間ばかり経った、或る暑い日のことでした。炭坑王、谷山家の一粒種の女主人公で、両親も兄弟も無い有名な我儘者で、同時に小樽から函館へかけた、社交界の女王と呼ばれていた、龍代さんと称する二十三歳になる令嬢が、小母さんと称する、中年の婦人を二三人お供に連れて、愛別から出来た新道をドライヴしながら、突然に、エサウシ山下の別荘へ遣って来たのです。そうして私は間もなく、その令嬢のお眼に止まる事になったのです……ええ。そうなんです……お話のテムポが非常に早いようですが、事実ですから致し方がありません。尤も後から聞いてみますと、その我儘女王の龍代さんは、小樽の本宅に廻って来たA記者の報告によって、私の事を承知するや否や、たまらない好奇心に馳られたらしく、何も彼も放ったらかして、私を見に来たものだそうですが、しかも来て見るや否やタッタ一眼で、氏も素性も知れない風来坊の私を捉まえて、死んでも離さない決心をしたというのですから、その我儘さ加減が如何に甚しいものがあったかが、アラカタお察し出来るでしょ