Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.043 Zeichen · 56 Bildschirme
「早く、早く!」
キャラコさんは夢中になってあしずりした。こんな辛い思いをするのは生まれてからこれが初めてだった。
ワニ君が躍り上って叫んだ。
「つかまえたア!」
越智氏が、金切り声を上げた。
「マキちゃんが、水の上へ頭を出した。……大丈夫! まだ生きてる!」
ようやく、この時になって岬の鼻から漁船が漕ぎ出してきた。しかし、漁船と二人の間は十四、五町もへだたっている。
『恋人』は、槇子を水の上へ押しあげながらいっしんに泳いでいるが、もう力がつきはてたらしく、時々波のしたへ、がぶっと沈んでしまう。
望遠鏡を持ってキャラコさんのうしろに立っていた山田氏が、身もだえしながら叫んだ。
「いま船が行かなければ、沈んでしまう」
漁船は、見るも歯痒いような船足でのろのろと近づいてゆく。
『恋人』の姿は、やや長い間海面の下に沈み込んでいたが、最後の勇気をふるい起こしたのだろう、槇子を抱えながら漁船へ向って泳ぎ出した。
見るさえ苦痛な十分間だった。……しかし、漁船はとうとう『恋人』のそばまで漕ぎ寄った。
岸の一同は、期せずして、
「万歳!」
と、叫んだ。
船の上の漁夫たちは、槇子と『恋人』