Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.361 Zeichen · 27 Bildschirme
「あなたの手が、すっぽり抜けて行きそうだわ。もっと、しっかりつかましてちょうだい」
小刻みな痛みが頻繁に来るらしく、そのたびに異様な力で、ギュッと握りしめて来る。
(誰でもいいから、ひとりいてくれると、いいんだけど。ほんとうに困ったわ!)
キャラコさんの頭に、ふと、ある考えがひらめいた。
(できるだけ賑やかにして、不安をなくしてあげよう!)
キャラコさんが、精一杯の声で叫ぶ。
「茜さん、いま、うんとにぎやかにしてあげますからね、ちょっとの間、ひとりで頑張っていてちょうだい。いいわね、手を抜いてよ」
不安がって、切れぎれに叫ぶ茜さんの声を聞き流して戸外へ飛び出すと、夢中になって、以前の荒物屋のほうへ駈け出した。公衆電話は、荒物屋の角にある。それは、さっき見ておいた。
息せき切って、公衆電話の中へ飛び込む。先に産婆さんにすぐ来てくれるよういって置いて、麻布の沼間の家へ電話を掛けた。驚いて、沼間夫人が電話口へ出て来た。
「たいへんなことが始まっているんですから、ボクさんだけを除けて、皆んなですぐここへやって来てちょうだい。今日は、あたしのための送別会なんですから、何もたずねないであたしのいう通りにしてね。