Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.236 Zeichen · 43 Bildschirme
キャラコさんは、ひとりで首をひねっていたが、そのうちにめんどうくさくなって、そんなことにクヨクヨしないことにした。
浮ヶ島の近くへ来ると、発動機艇は速力を落として、岬の鼻のところでとまった。
茜さんは、ボートから降りると、岸づたいに岬の鼻を廻り、先に立って御用邸の下の深い林の中へズンズンはいって行く。
キャラコさんは、なんだか嫌気がさしてきて、ついて行きたくなくなった。
「お話って、こんなところでなければいけないことですの」
茜さんは、キッと振り返って、冷酷な眼つきでキャラコさんを見すえると、
「それは、あなたのほうが、よくご存知でしょう。……逃げようたってだめよ。だまってついて来てちょうだい」
と、甲高い声で叫んだ。
キャラコさんは、閉口して、またトボトボと歩き出した。
鬱蒼と繁り合った葉の間から、陽の光が金色の縞になってさし込んでいる。しんとして、小鳥の声のほか何の物音もきこえない。
茜さんは、急に足をとめて、顎で指して、大きな切り株へキャラコさんを掛けさせると、自分は樹の幹に背をもたせて立ったまま、悪く落ち着いた声で、
「……どう? ここなら、どんな話でもできるわね。