Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.972 Zeichen · 66 Bildschirme
見苦しいようすを見せまいとして、押しだすような微笑をうかべながら、
「……日本からヴァンクウヴァへやって来たのが、あなたのようなお嬢さんだったら、それこそ、どんなに有難かったか!」
そういうと、眼に見えないくらい頬をあからめて、
「これは冗談です。どうか気になさらないでください。…人間というものは、取り乱すと、心にもないことを口走るものですからね。……ああ、よくしゃべくった。……風が冷たくなって来ましたね。もう、そろそろ、船室へはいりましょう」
すこし離れた船室の扉がとつぜんにあいて、レエヌさんが顔をだした。閾のところに立って、凍えたような眼でキャラコさんをにらみつけていたが、そのうちに、鶏の鳴くようなけたたましい声で叫んだ。
「ちくしょう、殺してやる!」
走り寄ってきて、
「……恥知らず!……すれっからし!」
と、わめきながら、手に持っていた短いロープの切れっぱしで、気がちがったように続けさまにキャラコさんの肩を打ちすえた。
キャラコさんは、ロープのしもとの雨の下で、一種自若とした面持ちでレエヌさんの顔を見上げていた。
(なるたけ、腹を立てないように……)