Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.122 Zeichen · 29 Bildschirme
鮎子さんは、半べそをかいて、また食卓へ坐る。その間に陽気なピロちゃんが、
「二ィ」
と、立ちあがる。
めいめい茶碗と箸を持ってお勝手へ馳け込む。
手早く茶碗を洗ってキチンと食器棚の中へ並べる。食卓の上を大きな羽箒でサッとひと撫で。どこにもご飯つぶなんかこぼれていない。それがすむと、キチンと窓際に整列する。
右へならえ! 番号!……一、二、三、四。
東京駅でヒットラー・ユーゲントの一行を見てから、鮎子さんたちの組に、いつの間にかそんな気風が乗り移ってしまった。
規律。質素。服従。団体精神。――こういう新しい感覚が、きゅっと皆の心をつかんで、にっちもさっちもゆかないようにしてしまった。この休暇ちゅう、規律正しい生活をしようと申し合わせたのである。
規律。――六時起床、九時就寝。御飯は必ず三杯食べること。四杯食べたい時は、唾を呑み込んでおく。
服従。――これは、キャラコさんが来てから。
質素。――観念上の問題。形より心のほうを重く見ること。(例。――上等のお菓子でも不味そうに食べること)
団体精神。――一致協力して敵に当ること。
朝御飯を無理やり三杯おし込むのも、窓際に整列するのも、みな青年隊の精神に即したことで、なかんずく、浮筏でほかの組の女の子を沈めにかけるのは、その最も偉大な発露なのである。