Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.452 Zeichen · 19 Bildschirme
キャラコさんは、それを少しも疑わない。境遇としてはずいぶん奇抜なのだが、それが一向訝かしく思わないのが、むしろ不思議なくらいである。
ただ、現実と非現実の境目ぐらいのところを歩いているような、妙にたよりのない気持がする。ひょっとすると、油絵の風景の中へ紛れ込んで来たのではなかろうか。自分がいま歩いているのは現実の世界ではなくて、額椽の中の幻想の世界なのではないかといったような、とりとめのない不安を感じる。
ところで、土橋を渡ると、果して、枳殻の垣根が始まった。
それから、雑木林を抜ける。……真向いの、なだらかな丘の斜面に、バンガロオふうの建物が側面に夕陽を浴びて、一種、寂然たるようすで立っていた。
キャラコさんは、満足そうな声を、だす。
「ほら、ちゃんとあったわ!」
心がはずんで、唄でもうたい出したいような気持になってきた。早く門のところまで行き着きたくなって、口を結んで、せっせと歩きだす。
下で見たよりも、しっかりした建物で、蔦のからんだ雅致のある石門がついている。
ところが、どうしたわけか、この石の門にはすこしも見覚えがない。門のそばから、灌木の植込みについた砂利の小径が、ひっそりと玄関のほうへ続いている。