Japanische Klassiker mit Furigana
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ココナットのみ
ココナットの実
夢野 久作
Lesen Sie ココナットの実 (ココナットのみ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.448 Zeichen · 35 Bildschirme
硝子が一面にスチームで露っぽくなっていたから、手の平で拭いた。冷たかったので頭がハッキリとなった。
妾の室はゴンロク・アパートの五階だった。窓の外は神戸の海岸通りの横町になっていた。左手に胡粉絵みたいな諏訪山の公園が浮き出している。右手の港につながっている船の姿がまるで影絵のよう。その向うから冷たい太陽がのぼって、霜の真白な町々を桃色に照している。窓硝子が厚いから何の音もきこえない。
そんなシンカンとした景色を見ているうちに、妾はヘンに淋しくなって来た。何故っていう事はないけれど……こんな事は今までに一度もなかった。
妾は古代更紗のカアテンを引いて、つめたい外の景色を隠した。思い切って寝返りをしてみた。
妾の寝台は隅から隅まで印度風で凝り固まっていた。白いのは天井裏のパンカアと、海月色に光る切子硝子のシャンデリヤだけだった。そのほかは椅子でも、机でも、床でも、壁でも、みんなアクドイ印度風の刺繍や、更紗模様で蔽いかくしてあった。その中でも隣りの室との仕切りの垂れ幕には、特別に大きい、黄金色のさそりだの、燃え立つような甘草の花だの、真青な人喰い鳥だのがノサバリまわっていた。