Japanische Klassiker mit Furigana
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シベリヤにちかく
シベリヤに近く
里村 欣三
Lesen Sie シベリヤに近く (シベリヤにちかく) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.803 Zeichen · 12 Bildschirme
何者にか、必要もないのに無理矢理に、この土煙のなかを引きずり廻わされているのだ! たったそれだけなのだ。彼はその理由を、軍人らしい単純さで政府の軟弱外交に持って行った。だが、隊長は複雑に考えることの嫌いな、短気な性質だった。で、彼はそんな憂欝な思案に、やり切れないまどろしさを感じた。で、またしても話題を「その女」に陥し込んで行った。
「どうだ。高村、その女はまだいるのか」
「は、いますとも。是非ひとつN市へ着けば御案内させて頂きますか」
彼は狡猾そうに、眼を細めて笑った。
「は、は、はあ。それには及ばんがね。」
隊長は額の汗をふき取った。「まったく面白い女じゃ。K将軍を誘惑するとは面白い話じゃて」
と、独語ちながら、にやりと笑った。高村もつり込まれて笑いかけたが、ふと起った蹄鉄の地面に喰い込むような強い響きに驚いて振返った。
「あッ!」
「何んじゃ?」
隊長も思わず振りむいた。と、そこへ土煙を蹴たてて、古田軍曹が馬を馳せて跳び込んで来た。顔も軍服も土煙にまびれて軍帽のふちから赭黒い汗がだらだらと流れ出ていた。彼は手綱をしぼると、挙手の敬礼をした。はずみを喰った乗馬が、青草のなかに前脚を踏み込んだ。