Japanische Klassiker mit Furigana
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ステッキ
ステッキ
寺田 寅彦
Lesen Sie ステッキ von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.740 Zeichen · 6 Bildschirme
あたまの上にはたいてい蠅が一匹ぐらいとまっていた。そういう夢のような幼時の記憶があるが、このように腰をかけながらついている杖などは杖としての珍しい用途であろう。力学的に考えるとやはりからだの安定を保つために必要な支柱の役をしていたに相違ない。
しかしこういうあらゆる杖に比べると、いわゆるステッキほどわけのわからない品物はないと思われる。屈強の青壮年が体重をささえるために支柱とするはずはないからである。もっとも銀座アルプスのデパートの階段などを上る時は多少の助けになるかもしれないが、そういう時でも彼らは必ずしもステッキの先端を床に触れているとは限らないのである。
西洋でいつのころから今のようなステッキが行なわれだしたものか知らないが、ロココの時代には貴婦人がたがリボン付きの長い杖をついている絵がある。またそのころのやさ男が粉をふりかけた鬘のしっぽをリボンで結んで、細身のステッキを小脇にかかえ込んで胸をそらして澄ましている木版絵などもある。とにかくあのころ以後はずっと行なわれて今日に至ったものであろう。いずれにしても人間がみんな働くのに忙しくて両方の手がいつもふさがっているような時代には全然用のないものであったに相違ない。