Japanische Klassiker mit Furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Lesen Sie ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.656 Zeichen · 110 Bildschirme
(※(ローマ数字「I」、1-13-21))
一
東海道本線を三等寝台車が走るようになった。だがあれは、三段にもなっていて、狭く、窮屈で養鶏所の人工孵卵器みたいだ。
シベリア鉄道の三等は二段だ。広軌だから、通路をへだてたもう一方にも窓に沿って一人分の座席があって、全体たっぷりしてる。
信吉は、そういう三等列車の上の段で腹んばいになり、腕に顎をのっけて下の方を眺めていた。下では三人の労働者風なロシア人が、カルタをやっているところだ。肩のところにひどいカギ裂きの出来た海老茶色のルバーシカを着たの。鳥打帽をぞんざいに頭の後ろに引っかけたの。剛そうな灰色の髪の小鬢へどういうわけか一束若白髪を生やしたの。三人ともまるで仕事みたいに気を入れてやってる。海老茶色ルバーシカの男は、真面目くさった顔つきで、ときどき横っ腹を着ているものごと痒きながら、札をひろったり、捨てたりしている。
信吉は、丸まっちい鼻へ薄すり膏汗をにじませたまま、暫く勝負を見ていたが、
「あーァ」
起きあがって、伸びをした。
「そろそろ飯か……」
この三人は、きまって飯時分になるとカルタをやる。