Japanische Klassiker mit Furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Lesen Sie ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.656 Zeichen · 110 Bildschirme
そして、互に負けを出し合い、停車場へ着くと物を買いこんで来て飯にするんだ。
ところでここは、モスクワ行三等列車の棚の中だ。どっちを向いて何と云ったところが、信吉の独言をわかってくれるような者はありっこない。
信吉はズボンのポケットから蟇口を出した。蟇口は打紐でバンドにくくりつけてある。下唇を突き出し、鼻の穴をふくらがして銭を算えた。モスクワまで、まだあと五日か、チェッ!
一枚の紙を、信吉は胡坐をかいている膝の上へのばした。果しないシベリアを夜昼鋼鉄の長い列車は西へ! 西へ! 砂塵を巻いて突っ走る。信吉は棚の上で日に一度はきっとこの紙を出しかけた。所在なかったり、寂しくなったりすると読む。
手紙だ。甥の卯太郎がよこした手紙だ。
「信あんちゃ。おかわりありませんか。うちではみんな丈夫ですから安心して下さい。けんど、村は不景気だヨ。山上ん田でも、佐田んげでも小作争ギおこった。源さや忠さや、碌さは警察さあげられて、まだ帰ってきねえ。村で新聞とっているのは田村さんげと(これは東吉の村で村長をやってる男だ)忠さげだけんなったど、忠さんは警察さあげられたから、新聞ことわるようにすっぺと婆さまが云っていた。