Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
」
「あんな詩人の真似は出来ない、僕には――」
「とぼけるない!」
「決して――。僕は今夜、七郎丸に頼んだ夜釣りに連れて行ってもらうつもりで、他に適当な着物が見つからないので、それでこんな装いをして来たんだよ。」
「じゃ、これから七郎丸の家へ行くつもりなの?」
「漁があってもなくっても帰りにはきっと寄る、手柄話をお待ちよ。」
僕は、胸を張って得意そうに剣を振った。すると女は、いきなり僕の胸を力一杯の拳固で突き飛した。
「嘘吐き! こんな月夜の晩に夜釣りがあって堪るものか。」
「おお、そうか!」
と僕は、たじろいだ。「夜釣りは闇夜に限ったのだったかな?」
「決っているじゃないかね。」
その時酒場の窓から赤く満悦げな顔が現れた。見ると七郎丸だ。「さっきから君が来るのを待っていたんだ。そんな処で、お月様なんかに見せつけていないで入らないかね。」
「七郎丸、君がいるんなら僕は無論入るよ。」
僕は何だか不機嫌になって、つかつかと酒場の中へ入った。
「七郎丸、もうこんな嘘吐きとは友達はおやめよ。そして、これからは、あたしと仲好くしようじゃないか。」
僕に続いて靴音高く駆け込んで来た娘は、いきなり僕たちの間を割って七郎丸の首玉にぶらさがった。