Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
ちゃんとここに、こう旗をおし立ててあるつもりで……」
その大酔の時に彼がこんなことをいって、壁にある旗の前に腕組みをして立ちあがったことを僕は憶えている。
「それだけに情熱があれば、間もなくそれはほんとうの海の上に飜ることになるに相違ないよ。」
と、その時僕もいって、彼の傍らに並んだことを僕は忘れていない。
「そうなったら俺たちは『七郎丸』を共有して大奮闘をしような。」
「約束する。」
と僕は点頭いた。「やあ、俺はとても面白い、ペガウサスに打ちまたがって雲を衝いて行くかのような気がする。」
僕たちは「ひらひらと打ちはためく旗」の傍らに、(酔っていたから、ほんとうに部屋が舟のように思われた。)あたかもギリシャ彫刻にある『大言家の像』のように屹立して、両手を拡げて海の歌をうたった。
「その時が来るまで俺たちは結婚しまいぜ。」
「勿論だ。俺には、あらゆる女という女は悉く怪物に見えてならないところだ。俺はパーシウス(女怪退治の勇者)の剣を、ジウスに授かって……」
だが、この誓言は、その後間もなく互いの和議を持って諒解した。――二人が学校を出て(七郎丸は水産講習所)間もない頃の、印象の鮮やかな僕の記憶である。