Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
弥次馬の追う隙もなさそうな、全く疾風迅雷の早業で、誰しも事の次第を見届けた者もあるまいが、それにしても群集の気配が余りにも馬耳東風なのがむしろ私は奇態だった。
「一体、今のあれは何の騒動なんだろう。喧嘩にしてはどうもおかしいが……」と私は首を傾げた。すると誰やらが小声で、
「万豊が担がれたんだよ。」といとも不思議なさげにささやいた。
朧月夜であった。あの一団が向方の街道を巨大な猪のような物凄さでまっしぐらに駈出してゆくのが窺われた。誰ひとりそっちを振向いている者さえなかったが、私の好奇心は一層深まったので、ともかく正体を見定めて来ようと決心して何気なさげにその場を脱けてから、麦畑へ飛び降りるやいなや狐のように前へのめると、やにわに径も選ばず一直線に畑を突き抜いて、彼らの行手を目指した。街道は白く弓なりに迂廻しているので忽ち私は彼らの遥か行手の馬頭観音の祠の傍らに達し、じっと息を殺して蹲ったまま物音の近づくのを待伏せした。突撃の軍馬が押寄せるかのような地響をたてて、間もなく秘密結社の一団は、砂を巻いて私の眼界に大写しとなった。非常な速さで、誰も掛声ひとつ発するものとてもなく、唯不気味な息づかいの荒々しさが一塊となって、丁度機関車の煙突の音と間違うばかりの壮烈なる促音調を響かせながら、一陣の突風と共に私の眼の先