Japanische Klassiker mit Furigana
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ゼーロン
ゼーロン
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.533 Zeichen · 29 Bildschirme
鐘の合間を見ては彼は、頻りと腕を振って私を呼んでいる。また、電報式に叩く鐘の暗号法を判断すると、それは私に、好くお前は帰って来たな、俺はこの頃大変寂しく暮しているから、これを機会にしてもう一遍仲間になってくれ、先ず今日の獲物を山分けにしようぜ――と通信しているのであった。
「鎧をとり戻したぞ」と彼は告げた。それはある負債の代償に私が地主の家に預けた私の祖先の遺物である。私の老母は、私がかようなものまで飲酒のために他人手に渡したことを知って、私に切腹を迫っている。私が若しこの宝物を取り戻して帰宅したならば、永年の勘当を許すという書を寄せている。半鐘は更に、
「空腹を抱えて詩をつくる愚を止めよ。」
と促した。
私は、あの緋縅の鎧を着て生家に凱旋する様の誘惑にも駆られたが、あの、ぎょろりと丸く視張ってはいるものの凡そどこにも見当のつかぬというような間抜けな風情の眼と、唇を心持ち筒型にして苦さを見せた趣が、却って観る者の胸に滑稽感を誘うかのような、大きな鹿爪らしい武悪面に違いない私の父の肖像画の懸っている、あの薄暗い書斎に帰って、呪われた坐禅を組むことを思うと暗澹とした。