Japanische Klassiker mit Furigana
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ゼーロン
ゼーロン
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.533 Zeichen · 29 Bildschirme
私は、私の比いなきペットの耳を両手で覆わずには居られなかった。――ゼーロンの蹄の音は私の帰来を悦んでいるが如くに朗らかに鳴った。私の背中では、薄ら重い荷がそれにつれて快く踊っていた。ゼーロンのお蔭で私は、苦もなく龍巻村へ行き着けるであろうと悦んだ。――これまで水車小屋の主は、経川の作品を売却する使いを再参自ら申出て、街へ赴くとそれを抵当にしてあっちこっちの茶屋や酒場で遊蕩に耽っては、経川に面目を潰すのが例だったが、相変らずさようなことに身を持ち崩していると見える。今日も私が、経川の作品を持参したというと、小踊りしながら袋の中を覗き込んだが、期待に外れて非常に落胆した。
「お前の主が経川の作品を携えて街へ行く時には、お前はいつでも木馬になってやるが好い、跛を引いて振り落としてやっても構わないさ。」
私は小気味好さを覚えながらゼーロンに向ってそんな耳打ちをした。
ところが僅か二里ばかりの堤を溯った頃になると、ゼーロンの跛は次第に露骨の度を増して稍々ともすると危く私に私の舌を噛ませようとしたり、転落を怖れる私をその鬣に獅噛みつかせたりするというような怖ろしい状態になって来た。