Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.878 Zeichen · 26 Bildschirme
という銘のある葡萄酒を六本までも仕込んだのは、はなはだ時宜に適した思い付き。タヌはと見れば、これもまた髪を梳り、丹念に爪を磨き、キャロン会社製造の「謝肉祭の夜」という香水をさえ下着に振り撒いたのは、その昔、東邦の騎士が兜に香を焚きしめたという故事もあり、覚悟のほども察しられて、勇ましくもまた涙ぐましき極みであった。
決死の両士を乗せたアランベエル商会の自動車は、遅々としてヨンヌの平野をのたくりゆくうち、ようやく正午近く、サンの町の教会の尖塔が、向うの丘の薄陽の中に浮びあがって見えるところまで辿り着いた。コン吉は今日こそは正当な昼飯にありつけると、心情いささか駘蕩たる趣きを呈しかけて来たところ、アランベエル商会は、その町の入口で、あたかも道路改修中の柔かいアスファルトの層の中へ前足を突っ込んでしまった。さながら蠅取り紙に足を取られた銀蠅の、藻掻けば藻掻くほど深みに引き込まるる、退くも引くも意に任せず、ここに全く進退谷まった様子。商会の後ろにはこのために往来止めを喰った数十台の高級自動車が、口頭と警笛をもって、「退け、退け」としきりに催促する。道路工夫はわめく、監督は地団太を踏む。