Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.011 Zeichen · 23 Bildschirme
三、差出すに名刺あり翻すに幟あり。『極楽荘』が所在するタラノの谿谷は、金山という高い山の麓の、石ころだらけの荒涼たる山地の奥にある。ここに行くにはボコニャアニョまで汽車に乗り、そこから数限りない谷川と峠を越え、こ暗い雑木林の中にかすかに切り開かれた『蛇の道』をくぐり抜け、黒柳の生えた大きな谷の縁を小半日も廻って行くのである。
コン吉は、タヌと検査官のうしろから、騾馬の背に揺られ、絶えずキョトキョトと落ち着かぬ視線を前後左右に放ちながら続いていったが、やがて、
「これは全く人跡未踏ですね。この半日、一人の人間にも出あわなかったじゃありませんか。……つかぬことをおうかがいするようですが、このへんにもやはり東洋ぎらいのコルシカ人ってのがいるのでしょうか」と、たずねると、検査官は肩をすくめて、
「これは意外ですね。途中に幾人もいたじゃありませんか。松の木のてっぺんにもいたし峠の躑躅の繁みの中にもいました。みな鉄砲を持っていましたよ。……あれは、前科者とか森林山賊とかといういかめしい連中なのです。ぶっそうなことにはね、コルシカ人ってのは、みな鉄砲の名人です。