Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.515 Zeichen · 27 Bildschirme
、聖林の大女優リカルド・コルテスの「ゴンドラ」、ドイネの名家ド・リュール夫人の「路易十五世時代の花籠」、……清楚なるもの、濃艶なるもの、紫花紅草、朱唇緑眉、いずれが花かと見紛うまでに、百花繚乱と咲き誇る。期せずして桟敷の上よりは、ミモザの花、巴旦杏の枝、菫・鈴蘭・チュウリップと、手当り任せに投げつければ、車上なるはかねて用意の花束に、熱き接吻を一つ添え目ざす方へと返礼する。桟敷の上では、これをつかもうと乗り出して墜落する奴、帽子を飛ばして禿頭を露出する奴、採取網を振り廻して、他人の頭に瘤をこしらえる奴、てんやわんやの大騒ぎ。
すると、この大騒動のまっただ中へ、耳を聾するばかりの轟々たるエンジンの地響を打たせ、威風堂々と乗り込み来たったのは、豪猪の如き鋭い棘を蠢かす巨大なる野生仙人掌をもって、全身隙間なく鎧いたる一台の植物性大戦車。アレアレッと驚き見まもる暇もなく、砲塔をゆるやかに旋回させ、八糎速射砲の無気味なる砲口を桟敷の中央に向けたと思うと、来賓席の二段目を目がけて、たちまち打ち出す薔薇やアネモネの炸裂弾。息もつかせぬ釣瓶打ち。桟敷の上からも棕櫚の木のてっぺんからも、たちまち起こるブラヴォ、ブラヴァの声。