Japanische Klassiker mit Furigana
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モスクワのつじばしゃ
モスクワの辻馬車
宮本 百合子
Lesen Sie モスクワの辻馬車 (モスクワのつじばしゃ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.305 Zeichen · 17 Bildschirme
日本女は惜しそうに艷々した苺のジャムを見ながら戸口へ歩いた。
――とても時間がないの。またこの次ね。
――この次?
――十年経ったら!
――アイヤイヤイ!
――どうして? 二度五ヵ年計画をやれば直ぐ十年じゃないの!
日本女は馬車のところへ戻った。彼女は坐席に体を投げるようにおろしながら、
――さあ、これでおしまい!
御者の背中へ向って云った。
――サドー※(濁点付き片仮名「ワ」、1-7-82)ヤへ行って。
御者は、手綱をさばき黒馬の背で柔かく鞭のような音をさせた。そして動き出しながらまたあっち向きのまま云った。
――三ルーブリ貰いますよ、こんなに待たされたんだから。
日本女は、モスクワにもう二年と六ヵ月暮してたのである。
――どんなに待たされたの? 爺さん。
(本当は爺さんでなく、まだ五十代のがっちりした馬車屋だった。)
――私のとこには時計があるのに――
――あんた、はじめこんなにより道するって云わなかったじゃないか。
御者は、農民なまりのない、いかつい声でおしつけるようにいい続けた。
――こんなによるんなら、誰にしたって五ルーブリは貰うところだ。