Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
いちのくらさわ
一の倉沢
久生 十蘭
Lesen Sie 一の倉沢 (いちのくらさわ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.237 Zeichen · 13 Bildschirme
分担金の必要はないのだが、菱苅と同様、停年近くの黄昏の状態で、みな、くすみにくすんでいる。谷川岳など、飛んでもない話だ。
「このおれに、やれるだろうか」
分担金を軽くすます方法は、自分も救援隊に入って、むずかしいところをいっしょにやればいいのだが、そんな芸当はできそうもない。
菱苅は両手の指をひらいて、眼の前にかざしてみた。動いてやまぬ蝶の羽根のように、指先がピクピクと震えている。三十代のはじめまでは、ホールドした岩角のぬきさしのならぬ感覚が指先に残っていたものだったが、いまは綴込のクロースの表紙や帳簿の革背のヌルリとした感じしか指どもは知らない。
「おれの手は死んでしまった……もう役にたたない」
足はどうだ。三十五年の長い椅子の生活のおかげで坐骨神経痛がはじまり、濡らしたり冷やしたりすると、猛烈に痛みだす。
「因果応報だ……」
菱苅は苦い調子でつぶやいた。
二年前から菱苅は仕事をしないことにきめていた。世の中には精をだせば出すほどみじめになるような仕事があるものだが、菱苅のやっている調査部の仕事などはそのいい例で、わずかに残った人間の誇りをまもるために、仕事を放棄することにした。