Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

いちにんならじ

一人ならじ

山本 周五郎

Lesen Sie 一人ならじ (いちにんならじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.312 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

「いいえとは、帰らないということですか」

「はい、……わたくし」と云いかけて娘は屹と面をあげた。「わたくし父に義絶をされてまいりました、この家のほかにまいるところは、ございません」

「義絶……それはまことですか」

「はい……」大助を見あげる娘の眼へ、そのときふつふつと泪が溢れてきた。

「貴方が箕輪の戦に片足をおなくしあそばしましたことは、いろいろ世間のとり沙汰でうかがいました。よくは存じませんけれども、そのとき傍らに恰好の木がございましたそうで、それを楔にかえば足を失わずとも済んだ、ふたしなみだという噂でございます。わたくしそれを聞くたびに、あんまり口惜しくて幾たび泣いたか知れませぬ」

初穂はせきあげてくるものを抑えるように、唇を噛んでぐっと喉を詰まらせた。それから再び面をあげ、忿りと訴えとを籠めた口調で続けた。

「……他人の事はどのようにも申せます、また事の済んだあとなら幾らも手だての思案はつきます。貴方がご自分の足を楔にかったのはふたしなみだったかも知れませんし、そうしなければならなかったかもわかりません。合戦のまっ唯中で、しかも呼吸の間ものがせぬ必至の場合、こうかああかの思案ができましょうか、貴方が片足をおなくしなすったのは、そうしなければならなかったのだとわたくしは存じます。