Japanische Klassiker mit Furigana
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いっせきわ
一夕話
Lesen Sie 一夕話 (いっせきわ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.921 Zeichen · 12 Bildschirme
小えんの如きはその例じゃないか? 昔から喉の渇いているものは、泥水でも飲むときまっている。小えんも若槻に囲われていなければ、浪花節語りとは出来なかったかも知れない。
「もしまた幸福になるとすれば、――いや、あるいは若槻の代りに、浪花節語りを得た事だけでも、幸福は確に幸福だろう。さっき藤井がいったじゃないか? 我々は皆同じように、実生活の木馬に乗せられているから、時たま『幸福』にめぐり遇っても、掴まえない内にすれ違ってしまう。もし『幸福』を掴まえる気ならば、一思いに木馬を飛び下りるが好い。――いわば小えんも一思いに、実生活の木馬を飛び下りたんだ。この猛烈な歓喜や苦痛は、若槻如き通人の知る所じゃない。僕は人生の価値を思うと、百の若槻には唾を吐いても、一の小えんを尊びたいんだ。
「君たちはそう思わないか?」
和田は酔眼を輝かせながら、声のない一座を見まわした。が、藤井はいつのまにか、円卓に首を垂らしたなり、気楽そうにぐっすり眠こんでいた。
(大正十一年六月)