Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぽんのはな
一本の花
宮本 百合子
Lesen Sie 一本の花 (いっぽんのはな) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.709 Zeichen · 55 Bildschirme
そのはずみを捕えたように、
「あなたは変ってるね」
大平が云った。
「あなた、本当にまた細君になる気持はないんですか」
「あなたはいかが?」
「ふーむ」
大平はうなって、然しはっきり云った。
「ないな」
よほど間を置いて、
「それが、だが自然なんだろうな、一方から云えば」
大平は椅子の腕木に片肘をつき、その上へ頬杖をついていた姿勢を改めて、腕組みをした。彼はそのままやや久しく沈吟していたが、急のその顔を朝子の方へ向け、
「まさか発菩提心という訳じゃありますまいね」
「そんなことありゃしないわ。ただ……」
「なに?」
「……私の心持ん中で、もう結婚生活、すっかり完結した気がするのよ。また、同じことを別にして見たいと思わないだけ」
彼等は、幸子の邪魔にならないように、初めっから小声で話していたが、このとき、朝子は異様な閃光が、大平と自分との低い、切れ切れな会話の内に生じているのを感じた。変に心を貫通する苦しい心持で、彼女は身動き出来なかった。大平は、一層低い声で、正面を見据えたまま、やっと聞える位に云った。
「――変りもん同士で、面白くやってゆけると思うんだがな……自由に……」