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Japanische Klassiker mit Furigana

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いっぽんのはな

一本の花

宮本 百合子

Lesen Sie 一本の花 (いっぽんのはな) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.709 Zeichen · 55 Bildschirme

Aozora Bunko

締切りで、毎日編輯所に用がある。

朝子はこれ迄と方針を変え、同じ沈滞した雑誌にも幾分活気を与えるため、経済方面の記事、時事評論など加えることにした。そのためにも用事が殖えた。朝子は、仕事に一旦かかると、等閑に出来ない気質を現わして働いた。

ほんの一時的な火花で、神経が疲れていたせいだという位に考えていた、先夜の、大平との感覚は、思いがけずいつまでも朝子の心に影響をのこした。編輯所で手が空き、窓から濠の景色を眺めている。浅く揺れる水の面に、石垣とその上の芝との倒影がある。水に一しお柔かな緑が、朝子の活字ばかり見ていた眼に、休安を与える。微かなくつろぎに連れ、そんなとき、朝子の心に、例の引っぱりが感じられた。引っぱりは、依然重く、きつく、暗かった。然しその暗さは、精神上の不幸のように心から滲み出して、眼で見る風景までを黝ませる種類のものではなかった。緑はどこまでも朗らかな緑に、日常のすべてのことに昨日、今日、一昨日そのまま純粋に感じられる。それ等とまるで対立して一方に暗い引っぱりと、それに牽かれて傾く心の傾斜とを感じているのであった。片側ずつ、夜、昼と描き分けられた一面の風景画のような心であった。