Japanische Klassiker mit Furigana
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いちまいのきっぷ
一枚の切符
江戸川 乱歩
Lesen Sie 一枚の切符 (いちまいのきっぷ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.503 Zeichen · 27 Bildschirme
上
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「イヤ、僕も多少は知っているさ。あれは先ず、近来の珍事だったからな。世間はあの噂で持切っている。が、多分君程詳敷くはないんだ。少し話さないか」
一人の青年紳士が、こういって、赤い血の滴る肉の切れを口へ持って行った。
「じゃ、一つ話すかな。オイ、ボーイさん、ビールの御代りだ」
身形の端正なのにそぐわず、髪の毛を馬鹿にモジャモジャと伸した、相手の青年は、次の様に語り出した。
「時は――大正――年十月十日午前四時、所は――町の町外れ、富田博士邸裏の鉄道線路、これが舞台面だ。冬の、(イヤ、秋かな、マアどっちでもいいや)まだ薄暗い暁の、静寂を破って、上り第○号列車が驀進して来たと思い給え。すると、どうした訳か、突然けたたましい警笛が鳴ったかと思うと、非常制動機の力で、列車は出し抜けに止められたが、少しの違いで車が止まる前に、一人の婦人が轢殺されて了ったんだ。僕はその現場を見たんだがね。初めての経験だが、実際いやな気持のものだ。
それが問題の博士令夫人だったのさ。車掌の急報で其筋の連中がやって来る。野次馬が集る。そのうちに誰れかが博士邸に知らせる、驚いた主人の博士や召使達が飛出して来る、丁度その騒ぎの最中へ、君も知っている様に、当時――町へ遊びに出掛けていた僕が、僕の習慣である所の、早朝の散歩の途次、通り合せたという