Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとあしおさきに

一足お先に

夢野 久作

Lesen Sie 一足お先に (ひとあしおさきに) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.200 Zeichen · 79 Bildschirme

Aozora Bunko

窓の框に瓶の底を載せて、パラフィンを塗った固い栓を、矢張り袖口で捉えて引き抜いた。顔をそむけながら、その中の液体を少し宛小瓶の中に移してしまうと、両方の瓶の栓をシッカリと締めて、大きい方を元の棚に返し、小さい方を内懐に落し込んだ……が……その濡れた小瓶が、臍の上の処で直接に肌に触れて、ヒヤリヒヤリとするその気持ちよさ……。

それから私はソロソロと扉の処へ帰って来て、聴神経を遠くの方まで冴え返らせながら、ソット扉を細目に開いてみると、相変らず誰も居ない。病院中は地の底のようにシンカンと寝静まっている。

私の心は又も歓喜にふるえた。心臓がピクンピクンと喜び踊り出した。それを無理に押ししずめて廊下に出ると、ゼンマイ人形のようにピョンピョン飛び出したが、鍛えに鍛えた私の趾の弾力は、マットを敷いた床の上に何の物音も立てないばかりでなく、普通人が歩くよりも早い速度で飛んで行くのであった。

私の胸は又も躍った。

片足の人間がコンナに静かに、早い速度で飛んで行けるものとは誰が想像し得よう。これは中学時代からハードルで鍛え上げた私にだけ出来る芸当ではなかろうか。これならドンナ罪を犯しても知れる気づかいは無いであろう。