Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとあしおさきに

一足お先に

夢野 久作

Lesen Sie 一足お先に (ひとあしおさきに) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.200 Zeichen · 79 Bildschirme

Aozora Bunko

その時に副院長が後手で扉のノッブを捻った音がした。そうして強いて落ち付いた声で、

「……早く電燈を消してお寝みなさい。……そうして……よく考えて御覧なさい」

という声が私を押さえ付けるように聞えた。

途端に私は猛然と顔を上げた。出て行こうとする副院長を追っかけるように怒鳴った。

「……待てッ……」

それは病院の外まで聞えたろうと思うくらい、猛烈な喚めき声であった。そう云う私自身の表情はむろん解らなかったが、恐らくモノスゴイものであったろう。

副院長は明かに胆を潰したらしかった。不意を打たれて度を失った恰好で、クルリとこっちに向き直ると、まだ締まったままの扉を小楯に取るかのように、ピッタリと身体を寄せかけて突っ立った。電燈の光りをまともに浴びながら、切れ目の長い近眼を釣り上らして、瞬きもせずに私の顔を睨み付けた。

その真正面から私は爆発するように怒鳴り付けた。

「犯人は貴様だ……キ……貴様こそ天才なんだゾッ……」

副院長の身体がギクリと強直した。その顔色が見る見る紙のように白くなって来た。扉のノッブに縋ったままガタガタとふるえ出していることが、その縞のズボンを伝わる膝のわななきでわかった。