Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのうそ
三つの嘘
豊島 与志雄
Lesen Sie 三つの嘘 (みっつのうそ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.740 Zeichen · 10 Bildschirme
やがて悪夢からさめたかのように、ぶるぶると首筋を震わして、突然わーっと大声を立てました。泣いてるのか笑ってるのか分らない大声で、なお喚き続けながら、そこの壁に頭をどしんどしんぶっつけました。唐草模様の美しい紙ではられてる壁面がまるく凹むかと思えるほど、頭をぶっつけ、狂人のように喚き立て、卓子の上の五彩の花瓶が転り落ちて、微塵にくだけ、大きな響きを立てました。
その物音を聞きつけて、執事がやって来ますと、元は紙毯の上に死んだように横たわっていました。
執事は召使たちを呼び、元を寝室に運び、酢をわった水でその額を冷してやりました。
元は身動きもしないで寝ていましたが、ふと眼を開き、ぐるりと室の中を見廻して、そして叫びました。
「私は孤独だ。私はもう死ぬ。財産もいらない。愛情もいらない。世の中もいらない。私はもう死ぬ。」
ぷっつりと言葉を切って、眼玉をぐるりとさして、瞼を閉じました。それきり静かになりました。呼吸も静かでした。突然眠ってしまったかのようでした。
執事は一切のことが腑におちないかのように、ゆるく頭を振りました。そして暫く、寝息のように静かな元の呼吸を窺っていましたが、また頭を振って、後退りしながら室から出てゆきました。