Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みっつのひふん

三つの悲憤

豊島 与志雄

Lesen Sie 三つの悲憤 (みっつのひふん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.748 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

なお家の中には、いろいろ武器もあります。動員出来る若い農夫や漁夫も、近くに大勢いる筈でした。

そのうちに阮東と范志清とは、長旅の疲れも出て、長椅子の上にうとうと眠りました。

阮東が眼をさました時は、もう太陽が高く昇っていました。范志清が万事の指揮をして、忙しく動き廻っていました。

阮東は、長年ぶりの生家に、而も戦闘を目前にひかえて、なにか涙ぐましい気持で、ぶらりと庭の方へ出て行きました。数本の灌木が紅葉し、叢のなかに咲いてる小さな花の白と紫が、眼にしみました。少し剥げおちた白壁には、昔のままの汚点がついていました。

その白壁の向う側の、高い木の梢にかかってる小鳥の巣が、子供の頃とそっくりな記憶をよびさましましたので、彼はその方へ足を向けると、はっと立止りました。

秋の陽を受けて、木の根本に屈みこんで、阮大人がじっと頭を傾けているのです、もう髪の毛はなかば白くなっています。なんとなく肌寒そうにも見えます。そして膝の上に、両袖で蔽うようにして、何かを大事そうに抱えています。

阮東には、それが何だかすぐに分りました。古くから伝わってる小さな壺で、手垢で黒ずんでいますが、貴重な品だと聞かされたことがありました。