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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

Lesen Sie 三四郎 (さんしろう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.765 Zeichen · 343 Bildschirme

Aozora Bunko

一つは遠くにある。与次郎のいわゆる明治十五年以前の香がする。すべてが平穏である代りにすべてが寝ぼけている。もっとも帰るに世話はいらない。もどろうとすれば、すぐにもどれる。ただいざとならない以上はもどる気がしない。いわば立退場のようなものである。三四郎は脱ぎ棄てた過去を、この立退場の中へ封じ込めた。なつかしい母さえここに葬ったかと思うと、急にもったいなくなる。そこで手紙が来た時だけは、しばらくこの世界に徊して旧歓をあたためる。

第二の世界のうちには、苔のはえた煉瓦造りがある。片すみから片すみを見渡すと、向こうの人の顔がよくわからないほどに広い閲覧室がある。梯子をかけなければ、手の届きかねるまで高く積み重ねた書物がある。手ずれ、指の垢で、黒くなっている。金文字で光っている。羊皮、牛皮、二百年前の紙、それからすべての上に積もった塵がある。この塵は二、三十年かかってようやく積もった尊い塵である。静かな明日に打ち勝つほどの静かな塵である。

第二の世界に動く人の影を見ると、たいてい不精な髭をはやしている。ある者は空を見て歩いている。ある者は俯向いて歩いている。