Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さんがつのそらのした

三月の空の下

小川 未明

Lesen Sie 三月の空の下 (さんがつのそらのした) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.005 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

花の咲く前には、とかく、寒かったり、暖かかったりして天候の定まらぬものです。

その日も暮れ方まで穏やかだったのが夜に入ると、急に風が出はじめました。

ちょうど、悪寒に襲われた患者のように、常磐木は、その黒い姿を暗の中で、しきりに身震いしていました。

A院長は、居間で、これから一杯やろうと思っていたのです。そこへはばかるような小さい跫音がして、取り次ぎの女中兼看護婦が入ってきて、

「患者がみえましたが。」と、告げました。

「だれだ? 初診のものか。」と、院長は、目を光らしました。

「はい、はじめての方で、よほどお悪いようなのでございます。」

まだ年の若い彼女は、こんなものを院長に取り次いだのは悪いとは思ったけれど、それよりも、目にうつる哀れな男の姿のほうが、いっそう強く心を動かしたのです。けれど、院長は容易に座を立ち上がろうとしなかった。

「そんなに悪いのに、ここへやってきたのか。」

「はい。」

院長は、きたときいては、捨ててもおけなかったのでした。どんな身分の患者であって、またどこが悪いのか、それを知りたいという職業意識も起こって、

「いま、ゆくから。」と、静かに、答えて、苦い顔つきをしながら、居間を出ました。