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Japanische Klassiker mit Furigana

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みうらろうじんむかしばなし

三浦老人昔話

岡本 綺堂

Lesen Sie 三浦老人昔話 (みうらろうじんむかしばなし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.637 Zeichen · 224 Bildschirme

Aozora Bunko

「万一の場合のほかに決して吹くな。」

師匠はくり返して念を押すと、森垣さんもかならず吹かないと誓を立てゝ、その譜の巻物をゆずられました。それも畢竟は森垣さんの伎倆が師匠に見ぬかれたからで、芸道の面目、身の名誉、森垣さんも人に羨まれているうちに、その翌年には師匠の宇兵衛が歿しました。こうなると森垣さんの天下で、ゆく/\は師匠のあとを嗣いで師範役をも仰せつけられるだろうと噂されていましたが、前にも云った通り、こゝに飛んでもない事件が出来したのです。

森垣さんは師匠から三つの秘曲をつたえられましたが、そのなかで最も大切に心得ろと云われた例の落城の譜――それはどうしても吹くことが出来ない。泰平無事のときに落城の譜をふくと云うことは、城の滅亡を歌うようなもので、武家に取っては此上もない不吉です。ある意味に於いては主人のお家を呪うものとも見られます。師匠が固く戒めたのもそこの理窟で、それは森垣さんも万々心得ているのですが、そこが人情、吹くなと云われると何うも吹いて見たくて堪らない。それでも三年ほどは辛抱していたのですが、もう我慢が仕切れなくなって来ました。うっかり吹いたらばどんなお咎めをうけるかも知れない、まかり間違えば死罪になるかも知れない。