Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃんはい
上海
横光 利一
Lesen Sie 上海 (しゃんはい) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.628 Zeichen · 292 Bildschirme
参木はしばらく高重の盃に当てた唇を眺めていた。
「競子の婿が死んだんだ。」
参木は急に廻転を停めた心を感じた。と、輝き出した巨大な勢力が、彼の胸の中を馳け廻った。彼は喜びの感動とは反対に、頭を垂れた。だが、次の瞬間、彼はじりじり沈んで行く板のような自分を感じた。
――俺が競子の良人に変るとしても、金がない。地位がない。能力がない。ただ有るものは、何の形もない愛だけだ。――
ふと、彼は高重の沈黙の原因を、自分に向けた高重の憐愍だと解釈した。
すると、俄に、怒りが腹の中で突っ立ち上った。彼は競子を――高重の妹を、押し除ける作用で充血した。すると、今まで彼女のために跳ね続けて来た女の動作が、浮き上って来て、乱れ始めた。お柳、オルガ、お杉、宮子、と泡立ちながら――。
「さて、いよいよこれから夜業の番か、おい君、今夜は危いから、僕から放れてひとり行っちゃ、おしまいだよ。」
高重はポケットのピストルに触りながら立ち上った。参木も彼の後から出ていった。彼は嫁いだ競子をひそかに愛していた空虚な時間に、今こそ決然と別れを告げねばならぬと決心した。
――まア、いくらでも、お目出度くめそめそしたけりゃ、するがいいよ。