Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃんはい
上海
横光 利一
Lesen Sie 上海 (しゃんはい) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.628 Zeichen · 292 Bildschirme
今は、彼はただこの支那街の風景の中を、支那婦人と共に漫歩する楽しさに放心すればそれで良いのだ。それ以外は、いや、考えちゃ、もう駄目だ。
翡翠に飾られた店頭の留木には、首を寄せ集めた小鳥のように銀色の支那沓がとまっていた。象牙の櫛が煙管や阿片壺と一緒に、軒を並べて溢れていた。壁に詰った印肉の山の下で、墨が石垣のように並んでいた。仏像を刻む店々の中から楠の割れる音が響いて来た。人波の肩の間で、首環売りがざくざくと玉を叩いた。参木は秋蘭の方を見た。すると、彼女の水色の皮襖は、羽根を拡げたように連った店頭の支那扇の中で、しなしなと揺れていた。
二人は旗亭の辷る陶器の階段に足をかけた。参木は秋蘭の腕を支えた。彼女は彼によろめきかかると笑っていった。
「まア、あたくし、まだあなたに御迷惑をおかけしなければなりませんのね。」
「どうぞ。」
「あたくし、こんな身体で、よく労働が勤まるとお笑いになるでしょう。」
「いや、たいへん感服させられております。」
「でも、あたくしたちは、ほんとうはまだまだ駄目なんでございますの。あたくしなんか、こんなに威張ったりしておりましても、もうすぐこうして美しい着物やなんか、着てみたくてなりませんのよ。