Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゃんはい

上海

横光 利一

Lesen Sie 上海 (しゃんはい) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.628 Zeichen · 292 Bildschirme

Aozora Bunko

それにようやく参木が帰って来たと思ったら、それは参木ではなくって甲谷であった。

お杉は参木があの夜限り帰らずに、自分を残して家を出ていってしまった日の、ひとりぼんやりと泥溝の水面ばかり眺め暮していた侘しさを思い出した。そのときは、あの霧の下の泥溝の水面には、模様のように絶えず油が浮んでいて、落ちかかった漆喰の横腹に生えていた青みどろが、静に水面の油を舐めていた。その傍では、黄色な雛の死骸が、菜っ葉や、靴下や、マンゴの皮や、藁屑と一緒に首を寄せながら、底からぶくぶく噴き上って来る真黒な泡を集めては、一つの小さな島を泥溝の中央に築いていた。――お杉はその島を眺めながら、二日も三日もただじっと参木の帰って来るのを待っていたのだ。――しかし、明日から、もし陸戦隊が上陸して来て街が鎮まれば、またあの日のように、自分はここでぼんやりとし続けていなければならぬのだろう。そのときには、ああ、またあのざらざらした鮫肌や、くさい大蒜の匂いのした舌や、べったり髪にくっついた油や、長い爪や、咬みつく尖った乱杭歯やが――と思うと、もう彼女はあきらめきった病人のように、のびのびとなってしまって天井に拡っている暗の中をいつまでも眺めていた。