Japanische Klassiker mit Furigana
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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
Lesen Sie 不在地主 (ふざいじぬし) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.990 Zeichen · 141 Bildschirme
「よしよし、可愛い、可愛い。」
由三は薄暗いベトベトする土間に仰向けになったまま、母親を見ると、急に大きな声を出し、身体をゴロゴロさせて泣き出した。
S――村
由三は空の茶碗を箸でたたき乍ら、「兄ちゃ帰らないな……」と、唇をふくれさせていた。
兄の健は、畠からすぐ市街地の「青年訓練所」に廻ったらしく、夕飯時に家に帰らなかった。――健は今年徴兵検査だった。若し、万一兵隊にとられたら、今のままでも食えないのに大変なことだった。「青年訓練所」に通えば、とにかく兵隊の期間が減る、そう聞いていた。それだけを頼みに、クタクタになった身体を休ませもせずに通っていた。
母親は背中へジカに裸の子供を負って、身体をユスリユスリ外へ出てみた。――子供は背中でくびれた手足を動かした。その柔かい膚の感触がくすぐったく、可愛かった。
「ええ子だ、ええ子だ。」母親は身体を振った。――一度、こんな風に負ぶっていて、子供をすっぽり、そのまま畑へすべり落してしまったことがあった……。
野面は青黒く暮れかかっていた――背が粟立つほど、底寒かった。
健達の、このS村は、吹きッさらしの石狩平野に、二、三戸ずつ、二、三戸ずつと百戸ほど散らばっていた。