Japanische Klassiker mit Furigana
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ふしょうのあに
不肖の兄
豊島 与志雄
Lesen Sie 不肖の兄 (ふしょうのあに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.889 Zeichen · 39 Bildschirme
「ええ、謝るよ、いくらだって。僕は本当にお母さんが好きだ。お母さんくらいいい人は……好きな人は、天下広しと雖もか……ねえお母さん。」
ふらりふらりと舟をでもこぐような調子に、僕はお辞儀をしてみせた。そのためか、頭の酔がかき廻されて、意識がぼんやりしていった。
それから僕は、餉台のふちにしがみつきながら、兄のしつっこい悪罵と叱責とを、下手な音楽をでも聞くような風に聞いていた。その太い言葉を、母の細い嘆声が伴奏していた。と、伴奏の方が突然はっきり浮き出してきた。
「ほんとに、この子は誰に似たんでしょう。」
僕はふっと頭を挙げた。
「そりゃあ、分ってるさ。父親に似たんだ。僕の知らない、誰も知らない、天の父親にか……ねえお母さん。」
その酔った時の口癖の、ねえお母さんがいけなかったらしい。突然、母の顔が馬鹿に大きくなってつめ寄ってきた。僕はぞっとして、そこにつっ伏して泣き出した……いや、本当に泣いたかどうか覚えていないが、泣き出した気持だった。何だかもうすっかりぼやけてしまっていた。そして結局、むちゃくちゃに失言を釈明して、それから、床の中に逐いやられたものらしい。