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Japanische Klassiker mit Furigana

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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

Lesen Sie 不肖の兄 (ふしょうのあに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.889 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

だが、そればかりでもなかった。

僕が「幼き愛」という変な詩を書いて見せた時のことを、お前は覚えているだろう。あの時お前は僕の様子を不思議がったね。だがこれで分ったろう。僕は一体、詩を書くといつもお前に見せていた。

それは女の感受性に敬意を表するからだ、と云えば立派だが、実は自分の詩についての自信がなかったからさ。それだもの、「幼き愛」などというあんな成心あって拵えた詩なんか、何の価値もありゃしない。それをお前はほめてくれた。いつも僕の詩を無遠慮にやっつけるお前が、いい詩だと云ってほめてくれた。僕はお前の顔色や眼付を窺いながら、ははん……と思った。それから、なおも一度読み返して、考えてる風をしてると、お前はこう云ったね。

「兄さん、それは誰との思い出なの。」

「馬鹿な。」

僕は思わず口走って、それから詩の原稿を引裂いてしまった。

「あら。」

その時のお前の、喫驚した顔ったらなかったよ。だが瞬間に、お前の黒い睫毛は、眼の色に現われた感情を隠してしまった。

西洋の誰かが、こんな意味のことを云っている。――昔の野蛮人は、占領した都市に、処女性のない潔白な女を残していったが、吾が文明は、潔白さのない処女を拵え出した。