Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よのなかのために

世の中のために

小川 未明

Lesen Sie 世の中のために (よのなかのために) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.184 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

あるときは、机の前に立ったり、すわったりしました。家の内を歩いてみました。どうかして、それを思い出そうとこころみました。しかし、雲をつかむようで、考えたことが、なんであったか、まったく見当がつきません。だが、最初それを考えた糸口となったものが、あったにちがいない。それは、なんであったか、僕は昨日から、今日へかけて、散歩した場所を目に浮かべたり、読んだ書物について、吟味したりしたのでした。けれど、やっぱり雲をつかむようだったのです。

あるとき、友だちが、僕と話したときに、いつもノートを持つ必要があるといいました。それは、歩いているときでも、また床の中にあるときでも、いい考えが浮かんだり、なにか気づいたことがあるときは、それを書きとめておかぬと忘れるというのです。だが、僕は友だちに向かって、そんなに、じき忘れてしまうような考えなら、けっきょくたいしたものでないだろう。ほんとに大切な思いつきなら、けっして、忘れることはないはずだといったのでした。

ところが、こんど、はじめて、かげのごとく、心の上をかすめて通る真理があり、たくみにそれをとらえれば、その真理こそ、人生にとって重大なねうちのあるものであるが、そのまま忘れてしまえば、永久に去ってしまうものなのを知りました。