Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しがつばか

世相・競馬

織田 作之助

Lesen Sie 世相・競馬 (しがつばか) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.112 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

武田さんのいない文壇は、そこだけがポツンと穴のあいた感じであったが、その穴がやっと埋まったわけだと、私は少しも変らない武田さんを見て喜んだ。四年も外地にいたが、武田さんは少しも報道班員の臭みを身につけていなかった。帰途大阪へ立ち寄って、盛んに冗談口を利いてキャッキャッ笑っている武田さんは、戦争前の武田さんそのままであった。悪童帰省すという感じであった。何か珍妙なデマを飛ばしたくてうずうずしているようだった。

案の定東京へ帰って間もなく、武田麟太郎失明せりという噂が大阪まで伝わって来た。これもデマだろうと、私はおもって、東京から来た人をつかまえてきくと、失明は嘘だが大分眼をやられているという。

「メチルでしょう?」

と、きくと、そうだとその人は笑って、

「相変らず安ウイスキーを飲み廻ってるんですね。眼からヤニが流れ出して来ても、平気でヤニをこすりこすり、飲んでるんですね。あの人だから、もってるんですよ。無茶ですね」

無茶だとは、武田さんも気づいているのであろう。しかし、やめられない。だから「武田麟太郎失明せり」と自虐的なデマを飛ばして、わざとキャッキャッはしゃいでいるのだろうと思った。