Japanische Klassiker mit Furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Lesen Sie 世相・競馬 (しがつばか) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.112 Zeichen · 39 Bildschirme
祈っても駄目だ、この病的な生活を洗い浄めて練歯磨の匂いのように新鮮なすがすがしい健康な生活をしなければならぬと、さまざまに思い描き乾いた雑巾を絞るような努力もしてみるのだが、その夜の道がそうした努力をすべて空しいものにしてしまうのである。なにもかもその道が無理矢理にひきずって行く。それは佐伯自身の病欝陰惨の凸凹の表情を呈して、頽廃へ自暴自棄へ恐怖へ死へと通じているのだと、もうその頃は佐伯はその気もなく諦めていたらしい。つまりはその道だったんだ、しかも暗闇だけがその道をいやなものにしていたのではないと佐伯はつけ加えた。日が暮れてアパートの居住者がそれぞれの勤先から帰って来る頃、佐伯は床を這いだして街へ出て行くのだが、町へ出るにはどうしてもその道を通らねばならないと思うと、業苦を背負ったように憂欝になってしまう。原っぱはいつもそこにあり、池はいつもそこにあり、径はいつも泥濘み、校舎も柵も位置を動かない。道の長さが変る筈もない。その荒涼たる単調さが街へ出ようとする自分のうらぶれた気分を苛立たせ、たちまち自分は灰色になってしまうのだというのである。
ところが夏も過ぎ秋が深くなって、金木犀の花がポツリポツリ中庭の苔の上に落ちる頃のある夕方、佐伯が町へ出ようとしてアパートの裏口に落ちていた夕刊をふと手にとって見ると