Japanische Klassiker mit Furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Lesen Sie 世相・競馬 (しがつばか) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.112 Zeichen · 39 Bildschirme
ざっと十三時間以上だ。その間一歩も外へ出ない。いわば一日中「カスタニエン」で暮しているのだ。梃でも動かぬといった感じで、ボックスでとぐろを巻いているのだ。しかし、十三時間の間、幾子と口を利くのはほんの二言か三言だ。あとは幾子の顔を見ながら、小説のことを考えたり、雑誌を読んだり、客と雑談したりしているのだ。客のなかには文学青年の入山もいる。なかなかの美青年で、やはり幾子に通っているらしい。いわば二人は心ひそかに張り合っているのだ。そしてお互い自分の方に分があると思っているのだ。
幾子は誰からも眼をつけられていた。そしてそんな女らしく、とくに誰か一人と親しく口を利くようなことはせず、通って来る客の誰ともまんべんなく口を利いていた。ところが、そんな幾子がどうした風の吹き廻しであろうか、その日は彼にばかし話しかけて来た。彼はすっかり悦に入ってしまった。
夜になると、幾子はますます彼に話しかけて来て、人目に立つくらいだった。入山は憤慨して帰ってしまった。
入山が帰って間もなく、幾子は、
「あたし、あなたに折入って話したいことがあるんだけど……。その辺一緒に歩いて下さらない」