Japanische Klassiker mit Furigana
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「もくせい」ごうのなぞ
中谷宇吉郎集 第六巻
中谷 宇吉郎
Lesen Sie 中谷宇吉郎集 第六巻 (「もくせい」ごうのなぞ) von 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.784 Zeichen · 269 Bildschirme
銭湯ふうの湯舟では、八分目くらい湯がはいっていれば、誰でも一応満足する。中へはいった時に、湯舟のヘリを越して湯があふれ出ないといって文句をつける人はめったにない。この場合、薄汚ないという感じがあまりしないのは、湯舟には八分目でも、その湯の面は流し場の面よりも高いからであろう。だから燃料を使う湯では、ヘリを高くした湯舟にしなければならないことになる。
それで低く掘り下げた温泉の浴槽がよいというのは、それにいつでも湯があふれているという条件があってのことである。すなわち、始終流し放しにしておくことができて、はじめて温泉の値打がでてくるのである。そしてじゅうらいの日本の温泉は、たいていこの流儀になっていた。これはずいぶん贅沢な話なのである。このごろ有名な温泉場にできる大ホテルなどでは、大理石の湯舟など豪勢なもので、銭湯式のやつがよくある。たぶん温泉の量が足りなくなったからであろう。
こういうふうに考えてみると、ホテルの大理石の湯舟よりも、田舎の温泉地で流し放しにしてある、粗末な石畳みの湯のほうが、ずっと贅沢なものなのである。昼夜の別なく、樋の出口から勢いよく流れ出ているあの湯の熱量を、もし石炭で補給するとしたら、おそらく月に五十トンくらいは燃さなければならないであろう。