Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちちとみつのながれるち

乳と蜜の流れる地

笠 信太郎

Lesen Sie 乳と蜜の流れる地 (ちちとみつのながれるち) von 笠 信太郎 (りゅうしんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.472 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

草原へと投げ返し反射させた言葉であろう。言葉として美しいのは、ほかならぬ胃の腑の満足感から来ているのではないか。荒涼としたエジプトから想像するとき、あの緑はいよいよお腹のすく思いをさせたにちがいない。私にしてこういうふうに感ずるのだから、恐らくヨーロッパの人たちは、あのアルプのゆたかな緑をながめるとき、日本人の私が青い海のなかに食慾を感ずるように、ちょうどそのようにバターを煮る匂いが呼び起すような食慾を感ずるのではなかろうか……。

そういえば、やはりそのころ山の裾を車で走っていたとき、高菜のような野菜が畑いっぱい見事に成長しているのを見つけて、あれは一体何だろう、きれいな野菜じゃないかと、ついまた食い気を催して、独り言ともつかぬことをいったら、中年の運転手だったが、あいそよく私の言葉を受け取って、

「ほんとにすばらしいレタスですね。レタスはレタスですが、牛の朝食なんですよ」

といったことを憶えている。日本とはちがって、あの国では、緑が人間よりはむしろ牛に結びついていると思ったことである。

あれこれ考えているうちに、私に一つの独断ができ上がってしまった。