Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぶさ
乳房
宮本 百合子
Lesen Sie 乳房 (ちぶさ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.932 Zeichen · 56 Bildschirme
待合所の壁にとりつけられている拡声機に、ようやくスイッチが入って鳴り出した。ガラス戸をあけて覗くと、雑音が混って聞きとり難い呼声を間違いなく聴こうとして、女連は今までよりなお深く襟巻に顎をうずめ、袂をかき合せている。
「エー、お待たせしました。……エー、二十八番、二十八番は六号へ。六号。エーそれから三十番」
その声につれて思想関係らしい四十ばかりの細君風の女が、薄べりを敷いた床几から立ち上り、ショールへ片手をかけ、黒いラッパを頼りなげに下から振り仰いだ。
「エー、三十番――あなたの面会しようとする人は他の刑務所に送られました」
ザザ鳴る雑音に遮られ、他の刑務所というのが、サの刑務所と云われたようにひろ子の耳にも聞えた。おとなしい細君風の女は、思わず一足のり出して、
「え?」
と、黒い拡声機に向って女らしく首をかしげてききかえした。が、スイッチはそれきりプツと音を立てて切れ、その女のひとは何とも云えない、困惑の身ぶりで、恰度旧劇の女形が途方にくれたときのしぐさにやるあのとおりの片足をひいた裾さばきでひろ子の方を見た。
ひろ子は同情に堪えない気がした。
「どこかよその刑務所へいらしたっていうらしかったわ。