Japanische Klassiker mit Furigana
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かんぱい
乾杯
豊島 与志雄
Lesen Sie 乾杯 (かんぱい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.788 Zeichen · 18 Bildschirme
彼はじっと彼女の卵形の顔を眺めました。
「乾杯しましょう。」
とろりとした茶色の液体をなみなみと満したグラスを、彼女は静かに手にしました。
二人は同時にグラスを挙げました。
彼女は眼を細めて飲みほし、グラスを卓上に戻しました。それを、彼は見定めてから、手にある空のグラスを、床板に叩きつけました。音はわりに小さく、微塵に砕けて、光燿の破片が散乱しました。
憤りと悲しみと一緒になった感傷が山川正太郎を囚えました。涙が流れました。
「ちょっと、こちらへ……。」
彼は室内の襖かげ、外から覗き見られない片隅へ、彼女を連れてゆきました。
彼は彼女の肩へ手をかけました。
彼女は頭を振りました。
「乾杯のあとで……いけません。」
それを上から押っかぶせて、彼は彼女を抱擁しました。彼女の柔かな身体を抱いた両腕に、ぐいぐいと力をこめました。彼女は片手を彼の胸にあて、とんと二度ほど叩きました。彼が腕を離すと、彼女は息絶えたように畳の上にくずおれましたが、やがて、一息、肩が動きました。
その息の根を見定めて、彼はそこから去りました。
中廊下に出て、曲り角を経て、茶の間へ行こうとしますと、そこに意外にも、塚本堅造が立っていました。