Japanische Klassiker mit Furigana
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かんぱい
乾杯
豊島 与志雄
Lesen Sie 乾杯 (かんぱい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.788 Zeichen · 18 Bildschirme
それは面影というほどはっきりしたものではなく、まあ存在の足跡とも言えましょうか。つまり、そこに居たことによってそこに足跡が残る、というわけでありましょう。
十人余りの客の、そういう足跡を、山川正太郎はじっとうち眺めていました。その観照には、痛いような快さがありました。それは酒の酔いにも似ていました。
けれども今、肉眼で眺めると、それらのものは消え失せて、ただ一人、加納春子がそこに佇んでいるきりでした。
彼女は気懸りそうに、山川正太郎の様子を窺っていました。――楕円形の顔、鶏卵を逆さにして少し引き延したのと、そっくりな顔で、※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)の尖りにふさわしく口がつぼみ、そして額がふっくらとしていますが、何かに注意をこらす時、両の眉が少しく寄りあうのでした。
その眉を見て取って、山川正太郎は言いました。
「まあちょっと、ここへお掛けなさい。話がありますから。」
加納春子は笑みもせず、またわるびれもせず、彼と小卓をはさんで、籐椅子のクッションに腰を下しました。そして彼の顔を見ながら、両の眉がまた少しく寄りあいました。と同時に、ぽっと頬に赤みがさしました。