Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
Lesen Sie 二つの (ふたつのじょぶん) von 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 115.903 Zeichen · 236 Bildschirme
争はれぬ母の面影が此無邪気な顔の何処かの隅からチラリとのぞいて、うすれかゝつた昔の記憶を呼び返す。『おとうさん、大きな団栗、こいも/\/\/\/\みんな大きな団栗』と小さい泥だらけの指先で帽子の中に累々とした団栗の頭を一つ一つ突つつく。『大きい団栗、ちいちやい団栗、みいんな利口な団栗ちやん』と出たらめの唱歌のやうなものを歌つて飛び/\しながら又拾ひ始める。余は其罪のない横顔をぢつと見入つて、亡妻のあらゆる短所と長所、団栗のすきな事も折鶴の上手な事も、なんにも遺伝して差支へはないが、始めと終りの悲惨であつた母の運命だけは、此児に繰返させ度くないものだと、しみ/″\さう思つたのである」。
御霊移しがすんで、一日おいて先生は、興津から修善寺へ数日遊ばれた。Rayleigh の Sound の耽読がはじまったのは、この小旅行中のことである。
明けて明治三十六年の元旦は、東京の下宿で迎えられた。「暖にて初日影も柔かに拝まれた」よい日であった。しかし「おとゞしの正月の事何くれと思出」された。いやな思いをしながら不衛生な下町の「流浪」の生活をつづけた末に、やっと西片町の気に入った家で、夏子夫人と初めて正月を迎えられた。